日本呼吸器外科学会 理事長あいさつ

千田雅之先生

特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
 理事長 千田 雅之
 (獨協医科大学医学部呼吸器外科学講座主任教授)

 福岡で開催されました第34回日本呼吸器外科学会学術集会の会期中、本年度の第1回理事会におきまして、理事長に選出されました。ご報告を兼ねて新理事長としてのご挨拶を申し上げます。

 日本呼吸外科学会はNPO法人資格を取得してから近藤丘元理事長、奥村明之進前理事長の運営のもと社会情勢の変化に対応しつつ、順調に成長してまいりました。この間、学術委員会研究の充実、学術誌のオンライン化、呼吸器外科テキストの発刊、サマースクールの充実、サーバーの立ち上げ、NCDを用いた学術調査、学会の国際化として学術集会時のinternational sessionの充実やEuropean Society of Thoracic Surgeonsとのコラボレーション、アニマルラボを用いた胸腔鏡教育セミナーの開始など、数々の事業を展開してきたと思います。

 新専門医制度はいまだ混乱の中ですが、呼吸器外科は外科専門医研修と連動したsubspecialty研修をプログラム制ではなくカリキュラム制として行なっていくことといたしました。若干の資格要件の変更を行う予定ではありますが、基本的には従来通りということになります。専門医制度においては、会員の中には呼吸器外科専門医合同委員会のあり方に、この際、変化を求める方もいらっしゃるかと思います。今後は、合同委員会のあり方を俎上に載せつつ、むしろ、日本胸部外科学会における呼吸器外科事業の活性化、有効利用を図り、学会員の外国施設への短期留学の斡旋や資金援助の事案など、日本呼吸器外科学会として本学会員の皆様に役に立つ事業展開をしていきたいと思います。

 今般、医療安全は重要な課題です。本学会は呼吸器外科術手術、特に肺癌術後死亡や合併症に寄与する因子に対する様々なsurveyを行い、リスク因子の解析結果を公表してまいりました。また、胸腔鏡技術認定に関しては、技術習得過程の事故を危惧し、早急な導入を回避してまいりました。しかし、現在胸腔鏡手術は呼吸器外科専門医の間に広く普及しており特殊な治療ではなくなってきています。そういう状況下ではありますが、胸腔鏡手術による重篤な事故の発生はゼロにはなりません。今後は、胸腔鏡における「安全技術」の認定などを通して少しでも事故を減らしていくことが必要かもしれません。

 また、今後は学術委員会とNCD委員会のコラボレーションにより、NCDを利用した学術研究を推進してまいります。本邦における呼吸器外科手術の実態と成績を明らかにすることにより課題を浮き彫りにし、学会員の皆様にその成績を還元するとともに、本邦におけるビッグデータを世界に向けて発信してまいります。

 世界経済の動きと連動して呼吸器外科の領域においてもアジアの勃興は著しいものがあります。Asian Society of Thoracic Surgeonsの設立の動きもあり、諸般の問題もありますが日本もアジアの一員として確固たる位置を示していかなければなりません。

 常に時代は流れ、新しい課題も多いですが、今後も学会員が協力して日本呼吸器外科学会のさらなる発展に貢献いただくことを期待しています。

 

2017年5月30日