心臓血管外科研修修了者の感想

大阪市立大学医学部附属病院呼吸器外科
泉 信博

1. 呼吸器外科医として,心臓血管外科研修が役立った点
2. 改良を要する点
3. 今後研修を希望する呼吸器外科医に対して一言

1.当院呼吸器外科は以前より心臓血管外科と密接な関係にあり、週2回の合同カンファレンスをはじめ、心臓血管外科・呼吸器外科・消化器外科・肝胆膵外科・小児外科の5科の研修を以前は研修医の間に、現在は研修医終了後に行っている.この環境において、心臓血管外科研修を行えたことは誠に恵まれていると思われる.
 さて、実際の研修において、私は術野展開と縫合技術に重点を置いた.通常呼吸器外科においては時々しか見られない心嚢内部の展開は見事なものであったし、縫合における展開や運針方法は非常に勉強になった.また、大動脈浸潤肺癌の手術に関しては呼吸器外科の視点と心臓血管外科の視点を組み合わせることができ、今後の診療にとても役立つものと思われた.
2.改良する点としては、他院で研修する場合3か月という短い期間ではやはり「お客さん」という待遇になるのはやむをえないので、最短でも1年間の研修が望ましいのではないかと思われる.さらに、当院では好条件が整っていたが、そうでない人たちでは個人で研修病院を求めることに困難があるため、できれば学会が主催して執り行っていただきたい.
3.呼吸器外科の術中操作はそのほとんどが大血管の処理であると思われるので、心臓血管外科医の指導を受けることは必ず今後に役立つものと思われます.私は3ヶ月間の短い期間でしたが、とても有意義な研修ができました.そのメリットは心臓血管外科に関する問題が4問免除されるだけではありません.是非、研修しましょう.

心臓血管外科研修を振り返る

秋田大学医学部外科学講座 呼吸器外科学分野
戸田 洋

 H20年11月より3ヶ月間、当学会教育プログラムの一環として開始された、心臓血管外科研修プログラムを経験した.現時点の学会の規定では、原則として外科専門医取得者を対象とすることが明記されているが、研修の時期に関しては、専門医取得以前であっても大きな支障はないと感じた.しかしながら、私見として、研修以前に肺葉切除術や縦隔リンパ節郭清術などの肺門・縦隔の操作を伴う手術の術者を少なくとも数例経験していることが、有用な研修に必要であると思われた.私は研修以前、Lobectomyの経験は10例程しかなかったが、0から10までの限られた症例から得られる生きた解剖学的な知識は、座学で得られるそれを遙かに凌ぐ.その生きた経験・知識が、この研修をより優れたものに変えると確信している.
 内容についてはプログラム自体が未だ黎明期にあるため、施設間でのばらつきがまだ大きいことが予想される.また、心臓血管外科レジデントとの症例の兼ね合いもあり、術者経験数に関しては残念ながら充分とは言えなかった.この点は改善を期待したいところではあるが、今後相互の学会間で研修を通した技術交流を盛んにすることによって、解決策を見出して頂ければ有難い.要はgive and takeである.しかし総合的に見ると、研修が非常に有用であったことに変わりはない.手術で余った人工血管や縫合糸で血管吻合の練習を行うことは、常日頃から自身の手技向上を怠らないという外科医の心髄を思い起こさせてくれるものであったし、心臓生理・解剖や血管作動薬に関する知識は格段に増したと考える.
 「餅は餅屋」の時代から、世間はもはや「コンビニ」時代へと変遷した.呼吸器外科医であっても、幅広い知見を有し、よりよい診療に生かすためにも、是非とも推奨すべきプログラムであった.

心臓血管外科研修を修了して

T.F

 自施設の心臓血管外科において、3か月間の有意義な研修を受けさせていただきました. 呼吸器外科領域における血管外科的手技としては、肺動脈形成、上大静脈置換などであるが、これらの手技における心臓血管外科医の“技”を習得すること、また、術中に血管にまつわるトラブルが生じたときなどに、自分で処理が可能か、心臓血管外科医に依頼するべきかの判断あるいはそのタイミングについて習熟することを目標として臨んだ.
一般外科でトレーニングをしてきたため、吻合の基本は消化管吻合であった.吻合時に対応する組織を近接させて行う連続縫合か、あるいは縫いやすいようにある程度距離を置いて一針ごとに行う結節縫合で行ってきたが、血管吻合においては対する組織を離しておきながらに連続縫合をしている場面をよく見かけた.これにより、縫いやすくかつ、組織を密着させることが可能なようであるが、それにはピッチ、バイトの感覚が十分に備わっていなければ難しく、次の一針、ひいては、完成時の姿を頭に描いて運針をしていく必要がある.血管でなくとも最後に帳尻を合わせるような方法ではなく、上記のように行うことで、確実で安心できる吻合が可能なのではないかと考えさせられた.
次に感じたのは、止血に関しては、特別の注意を払って行われているという点であった.いままでも十分に止血を行ってきたつもりであったが、心臓血管手術では抗凝固を行う頻度が高いため、場合によっては止血だけに1時間以上もの時間を割くことがあり、入念な止血は安全な術後管理につながってくるのが実感できた.
体外循環については、十分に理解し得たとは言えず、短期間での習得はなかなか難しいであろうと感じた.また、当院では先天性心疾患の手術も多数行われているが、これらにおいては短期間で病態を理解することすら難しいと感じるので、成人の心臓血管手術を基本に研修するのが望ましいと考えられた.
最後に心臓血管外科研修を快く引き受けてくださった当院心臓血管外科スタッフの皆様に感謝申し上げます.

K.N

1.呼吸器外科医として,心臓血管外科研修が役立った点
 心嚢内の解剖が正面から観察できたことが大きな経験となりました.肺門部の腫瘍で心嚢内で肺動静脈の結紮が必要な場合がありますが、違った角度からこれらの血管を見ることができて勉強になりました.胸骨正中切開症例が当科では年間10例強であり,合併症に対する経験が少なかったのですが,様々な対処法や最新の治療を経験できたことは、大きな財産となりました.
 呼吸器外科医としてあまり関連はないのですが,大腿動脈塞栓症に対するFogarty balloon catheterによる血栓除去術を経験でき,血栓症に対する予防の大切さを痛感させられました.

2.改良を要する点
 当科は心臓血管外科講座の1部署であるため,心臓血管外科研修の申し込み・受理がスムースでしたが,この申し込み手順が他施設間でも滞りなく行えるようなマニュアルが制定されれば、今後の研修希望者が研修しやすいのではと愚考致します.また,他施設研修となると病院個々のシステムが全く違ってくるため,3ヶ月ではその適応だけで過ぎてしまうことが危惧されます.

3.今後研修を希望する呼吸器外科医に対して一言
 研修医終了から呼吸器外科専門医を受験するまで,少なくとも3年以上の期間呼吸器外科学を研修されると思います.その間の3ヶ月間心臓血管外科研修を履修することは,以降の呼吸器外科手術にも役立つ面が多々あると思います.ぜひ研修をお勧めします.