事務局代表あいさつ

サマースクール事務局代表

第10回 呼吸器外科サマースクール2022
事務局代表
神戸大学大学院医学研究科 外科学講座呼吸器外科学分野
眞庭謙昌

医学部学生、研修医・レジデントの先生方、コロナ災禍により2年延期された呼吸器外科サマースクールが神戸のポートアイランドで開催されます。これまで毎年、100人程の医学部学生、研修医・レジデントにご参加いただき、全国から集まった40人余りの選りすぐりのインストラクターの先生方と過ごしていただいております本会も回を追うごとに盛り上がりをみせていましたが、今回は10回を迎え、これまでの活気を是非とも取り戻していただきたいと思っています。

講習プログラムでは、手術シミュレーター等を用いた基礎的なドライラボ、動物の摘出気管・肺を用いたウェットラボ、さらには生体動物の手術を体験するアニマルラボを通して、呼吸器外科手術の基本手技から肺切除術まで経験してもらいます。また、講演では呼吸器外科医の日ごろの診療から充実した生活の様子まで各世代のドクターから紹介していただきます。そして、十分に感染対策を施したうえで情報交換の場も用意する予定ですので、インストラクターから呼吸器外科医の本音を聞き出すもよし、受講者同士で将来の夢を語り合うもよし、夏の夕べを楽しく過ごしていただけると思います。

呼吸器外科は今、まさに医療の最先端を行く花形外科になってきています。まずは手術手技ですが、今回も経験していただく内視鏡手技は外科のどの領域にもまして最先端技術を取り込み、大きく発展しています。高精細な3D内視鏡手術、胸に一か所のポート孔で行うユニポート・サージェリー、そしてロボット補助下手術と、機器の開発と手技の洗練が両輪となって、合理的な呼吸器手術に向けての取り組みが全国、全世界の呼吸器外科医によって進められています。肺がんは現在の呼吸器外科にとって最も重要な診療対象ですが、その発生頻度は世界的に増加を辿っています。肺がんの手術件数も増加が続いており、どちらの施設でも術者の確保が追い付かないほどです。その一方で、上述の手術法の進化、さらには分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場、がんゲノム医療の導入など、医学・医療のエネルギーが肺がん制御に向かって注入されている現状です。これからの呼吸器外科医はその中心に立って、これらの技術をマネージしていく立場を担うことは間違いありません。

低侵襲手術の発展に注力するもよし、新規薬剤を組み合わせた集学的治療の開発に取り組むもよし、プレシジョン・メディシンの一翼を担っていくもよし。将来の呼吸器外科医の姿について、同じ志をもった者同士、しっかりと語り合える機会になれば幸いです。