理事長あいさつ

日本呼吸器外科学会 理事長 吉野一郎

外科に興味のある初期研修医と学生の皆さん、たいへんお待たせしました。今回の呼吸器外科サマースクールはCOVID-19感染拡大の影響のため、3年ぶりの開催になります。

ご存知のように日本中の病院はCOVID-19の影響を受け、学生実習や初期研修にも大きな影響が出ています。先輩や仲間同志の交流も制限をされていることですから、皆さんが将来の専門を考える機会は著しく損なわれていることと察します。このような状況での本サマースクールの開催はとても意義深いもだと思います。それは、このスクールでは手術を体験すること、交流することを通して呼吸器外科の世界を体感していただくことが目的だからです。大学や地域の垣根を超えて、多くの友人や先輩と出会い語らうことで、これから始まる医師人生(できれば呼吸器外科医人生)のリアルな目的や動機を見つけることができると信じております。人と人とが交流できる機会が減っていくWith Coronaの時代においても、専門職集団である学会は続いていきます。このスクールで出会った彼や彼女と数年後、地方会や呼吸器外科学会で再開できることを想像してみてください。何と素敵なことではありませんか!学会は勉強するだけではなく、同じ志を持ち、同じ苦労をしている者同志が語り合うところでもあります。そのような交流を通して、この仕事を全うする力が湧いてくるのです。このサマースクールでも、きっと皆さんの心に火を付ける出会いが待っていることでしょう。

ところで、最近の呼吸器外科は、手術数の増加に加えて、低侵襲手術(通常のVATS、RATS、Uniport VATS)や集学的治療の多様化・深化により、ベテランである私たちでもワクワクするような新たな時代を迎えております。元よりスペシャルな専門職ですが、このほど新専門医制度における外科サブスペシャルティとして正式に承認されました。本スクールでは先輩たちの体験談を通して、専門医へのリアルな道筋もお示しできると思います。

 

それでは皆さん、サマースクールで出会えることを心から楽しみにしています!

呼吸器外科のFuturability
~リスクを超えて未来医療に挑戦する呼吸器外科医を~

胸部外科学会理事長
大阪大学心臓血管外科
澤 芳樹

日本胸部外科学会理事長

 世界最速最先端で高齢化社会を進む我が国において、従来の創薬や医療機器開発の時代から、新たなサイエンスの発見に基づく新しい治療開発への挑戦が始まり、これまで治らなかった人が治る医療イノベーションの時代に突入しつつある。呼吸器外科領域においても、Qualityの高い治療レベルが求められるようになり、治療方法がより低侵襲化の方向に急激に進んでいる。一つの方向性は従来の手術をより低侵襲でおこなう内視鏡手術であり、ロボット手術と同時に手技料の加算が認められ、今後の一層の展開が期待される。
 そのような呼吸器外科学の進歩の中で、最も重要なことはいかに優れた外科医を一人でも多く育成することであり、彼らが次世代を担うことで、呼吸器外科学の将来は明るい。
 これらを背景に胸部外科学会では、呼吸器外科学会と協力して夏季休暇等を活用してサマーセミナーを実施し、若手の呼吸器外科医の育成として呼吸器外科領域のドライラボやウエットラボなどを駆使して最先端の手術手技について、医学生から初期研修医そして呼吸器外科専門医に至るまでのOff the Job Trainingを実施してきた。
 難治性疾患を克服するためには常にイノベーションによる新しい技術の進歩と外科医の挑戦が必要である。是非とも、呼吸器外科サマーセミナーを通じて一人でも多くの優れた外科医が育ってくれることを期待してやまない。