日本呼吸器外科学会理事長あいさつ

日本呼吸器外科学会理事長吉野一郎先生

特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
 理事長 吉野 一郎
 (千葉大学大学院医学研究院 呼吸器病態外科学 教授)

 長崎市およびウェブ上で開催されました本年度の第一回理事会において、第4代理事長に選出されました。ご報告を兼ねてご挨拶を申し上げます。

 1992年に入会以来、日本呼吸器外科学会には、呼吸器外科医として、研究者として、また教育者として今日まで育てていただきました。最近10年間では役員として、初代理事長の近藤先生から第二代の奥村先生、第三代の千田先生のご指導のもと、役員として本会の運営に尽力して参りました。また2018年には学術集会を主催する栄誉と貴重な経験を与えていただきました。これらの経験を通しまして、本学会に深く御恩を感じるとともに、呼吸器外科の将来、そして学会の役割について考えるようになりました。

 日本呼吸器外科学会の歴史は、呼吸器外科という医療の確立と呼吸器外科医の存在を社会に認めさせてきた歴史であると認識しております。設立前年の1983年にはわずか10の大学にしか呼吸器外科あるいは呼吸器外科を中心とした教室がありませんでしたが、2021年4月の時点では54の大学に増えております。1989年に専門医制度を確立、1991年に日本医学会に加盟し、2008年には呼吸器外科の標榜が国の制度の中で承認され、多くの病院に呼吸器外科が設置されていきました。そして、最近、国が後押ししている新専門医制度においても、subspecialtyとしての呼吸器外科領域が正式に承認されるようにすることが私の最重要な職務の一つであり、これを持って呼吸器外科の基盤がいっそう磐石になるものと確信しております。一方、世界的に見ると、欧州を中心とした国際的な呼吸器外科学医(Thoracic Surgeons)の団体でありますEuropean Society of Thoracic Surgeonsは、日本呼吸器外科学会の発足に遅れること10年の1993年にEuropean Association for Cardio-Thoracic Surgeryから分派する形で設立されております。呼吸器外科(Thoracic Surgery、General Thoracic Surgery、Chest Surgery)という比較的新しい領域が国際的なidentityを獲得するのに日本が先鞭をつけ、貢献しているとも言えます。呼吸器外科の国際的地位確立にさらに貢献できればと思っております。

 さて呼吸器外科手術数は、年々増加傾向にあり、2018年には103,422例が登録されています。そのうち原発性肺悪性腫瘍手術は45,871が最も多いのですが、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、気胸・膿胸などの胸膜疾患も軒並み増加傾向を示していますように、社会における呼吸器外科の重要性が増しています。さらに原発性肺悪性腫瘍においては、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬が周術期治療に組み込まれつつあり、症例・術式選択そしてアウトカム評価について検討していくことは呼吸器外科医に課せられた大きなテーマであります。また従来のVATSに加えRATS、Uniport VATSなど技術やテクノロジーの進歩は、我々の外科医療に多様化と深化の機会を与えてくれています。本学会および関連団体との共同事業を通して、これら新しい呼吸器外科医療に関する教育と研究に貢献していきます。

 最後に、この1年6ヶ月は、世界中の人々の生命、生活、団体、活動が、新型コロナ肺炎に翻弄された1年でありました。私たちの学会活動におきましても、学術集会、教育関連セミナー、サマースクール、専門医試験など大きな影響を受けました。第37回会長の遠藤俊輔先生、第38回会長の永安武先生には大変なご尽力をされてと思いますが、未来に繋がるレジリエンスを発揮していただいたことは賞賛に値すると存じております。このようにWith Corona時代に柔軟にそして力強く対応していく必要がありますが、「変わるもの、変えなければいけないもの、変えてはいけないもの」など、皆様とともに考えて、判断して参りたいと存じますので、何卒ご支持、ご支援賜りますようお願い申し上げます。

2021年6月11日