COVID-19感染流行期における呼吸器外科手術の術前肺機能(スパイロトリー)検査に関する提言
2020年4月23日
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会 理事会
COVID-19感染に伴い、不要不急あるいはCOVID-19感染者の肺機能検査を行わないことが日本呼吸器学会より提言されております。
(https://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/information/20200327_statement.pdf)
すでに、各施設の判断で一般外科手術前のルーチン肺機能検査を含む不要不急の肺機能検査は行われなくなっている状況と推察致します。また、それに伴い各呼吸器外科診療科においても、肺切除量が少ない、CTで肺野に基礎疾患を認めないなどの症例で、肺機能検査を縮小することが検討されていることと存じます。
一方、呼吸器外科手術においては、分離肺換気を多用する事、肺機能の損失が術後の合併症やQOLに直結する事、手術適応や術式決定に呼吸機能の把握が必須である事など、術前肺機能検査の意義は他領域の手術に比べ格段に高いと言えます。
日本呼吸器外科学会としては、呼吸器外科領域の術前肺機能検査に関して以下のように提言いたします。
1 呼吸器外科手術の術前には肺機能検査を実施しておく事が望ましい。
2 以下の3つの条件を満たす場合、術前の呼吸機能検査を省略できる可能性がある。
臨床所見:日常的に運動制限がなく、激しい運動をした時だけ息切れがある(mRMC0相当)。
検査所見:血ガス分析や経皮的酸素飽和度測定で酸素化能に問題なく、胸部CT肺野条件で肺機能低下を示唆する所見がない。
術式:予定肺切除量が少ない(部分切除や単一区域切除など)、あるいは肺切除を伴わない(胸壁や縦隔など)手術である。
3 肺機能検査を行う場合は、問診・臨床症状等でCOVID-19感染を除外しておく。COVID-19感 染を疑う場合や感染が蔓延している地域では、胸部CTやPCR検査などで可能な限りCOVID- 19感染を除外しておくことが望まれる。
(運用にあたっては、各地域のCOVID-19感染の蔓延状況、施設における医療資源の準備状態、そして個々の患者の臨床所見を総合的に勘案すること)
掲載 2020年4月24日