COVID-19パンデミック期における肺癌手術数の減少はがん検診の受診者数と関係か?
厚生労働科学特別研究事業「新型コロナウイルス感染症に対応した新しい生活様式による生活習慣の変化およびその健康影響の解明に向けた研究―生活習慣病の発症および重症化予防の観点から」の日本医学会連合門田班臨床外科グループ研究として、日本呼吸器外科学会が担当した成果がLUNG CANCERにacceptされ、このほどweb上で公開されましたので報告します。
Sato Y, Yamamoto H, Ikeda N, Konishi H, Endo S, Okada Y, Kondo H, Shintani Y, Toyokoka S, Nakamura H, Hoshikawa Y, Yoshikawa T, Yoshino Y, Kakizoe T, Chida M. The impact of COVID-19 on thoracic surgical procedures in Japan: analysis of data from the National Clinical Database
LUNG CANCER in press
https://authors.elsevier.com/sd/article/S0169-5002(22)00601-8
要約:2014年から2020年までのNCDデータを用いて、COVID-19パンデミックが始まった2020年の原発性肺癌、縦隔腫瘍、転移性肺腫瘍の手術件数について調べたところ、原発性肺癌や縦隔腫瘍は2020年に前年より5.1%/5.0%減少していることが示されました。それまでの経年増加約5%を考慮すると手術対象者の10.1%/10.1%が手術を受けなかった可能性が示唆されます。対照的に転移性肺腫瘍は前年までと同様に3.8%ほど増加していました。
また2020年のがん検診の3-7月の受診者数前年同時期よりも大きく減少しており、肺がん手術数は1-2ヶ月遅れで検診受診者数に追従していることも示されました。また、COVID-19患者が最多となった年末には肺癌手術件数は回復しており、トリアージの影響は限定的と考えられました。
以上よりCOVID-19パンデミック期の原発性肺癌や縦隔腫瘍の手術数の低下は、がん検診受診者数の低下が主たる原因と考えられ、パンデミック下においてもがん検診を継続する事の重要性が示唆されました。
NCD委員会委員長 佐藤幸夫
理事長 吉野一郎
掲載:2022年8月22日